がん患者さんのご家族から亡くなったとの連絡。
葬儀が終わったので、ご報告とのこと。
医師の見立てから1ヶ月以上、長く過ごされることができました。
今から1年前、鍼を受けたいので予約を入れたいという電話がありました。
女性はまだ40歳。緩和ケアに通院しているといわれました。
抗がん剤の副作用か分からないけど手足のしびれがあり辛いという。
タキソール系の抗がん剤を使用すると起きる現象です。
当院では対応しているのでご都合のいい日時に予約を入れていただきました。
初診時、くわしくお話を伺いました。
通院されている緩和ケアは総合病院なので、カウンセリングも含めた様々な治療を受けていると思っていたら違っていました。
診察は5分、痛みを訴えると強力な痛み止めを処方してもらうだけでした。もはや、 検査する必要はないと医師から言われたそうでした。
もうどうすることもできないから、検査する必要もないというのが、医師の言い分らしい。
「状態を診せてください」と言って足や痛みを訴えるお腹まわりを確認しました。
脇腹にゴムボールのような弾力がある大きなしこりが2つがあり、今のがんの状態を表していました。
「今まで誰も触って診てくれなかったんですよ」あきらめと怒りを感じました。
ぼくは黙って話を聞き、お腹を圧して痛みを感じる箇所を確認していった。 どこを圧しても痛いとはなされる。
「わたし、悪くないですか、悪化していませんか?」
ぼくは、患者さんの痛みの確認作業だけをして 痛みを軽減させるために、鍼灸でできることを行いました。
それを繰り返していると患者さんの頬がほこばらました「嬉しくて」そう言って、患者さんが涙をこぼしていた。
ぼくは、よかったですとだけを伝え、肩、腰にも鍼治療を続けながら、鍼灸免許を取得して間もない頃のことを思い出した。
20代のぼくは、病院で鍼灸をしていました。
免許を取得して1年も経っていないため担当患者はいませんでした。
どのような流れかは忘れましたが、60代の末期がんの患者さんを担当することになりました。
末期のがん患者さんは背中や腰が痛いといわれました。
正直、どうすればいいのか分からない。あちこち触診をして痛みの確認をしました。そして、痛みのある箇所に鍼をすると、なぜか効きました。
その時も患者さんは、「がんの医者は触りもしなかった、ちゃんと触って診てくれたのは先生だけですよ」と話されました。
鍼灸師が、がん患者さんにできることは限られています。鍼灸でがんが治せるとはいいませんが、触診して異常がある箇所に鍼をする。これだけでも十分患者さんは喜んでいただけますし、症状が和らぎます。
患者さんの訴えを聴くことも大切な治療の1つだと思います。
治らないと医者から言われていても、でも患者さんは少しでも元気になりたいという希望を持っている人がほとんど。
治ると言ってほしいのが本音だと思います。
お亡くなりになる2週間前まで鍼灸を受けて、1年間、鍼灸をさせていただきました。
いつも鍼灸を受けるのを楽しみにされていたと、ご家族が話されていました。
ありがたいとしかいいようがありません。