「人はなぜ痛むのか?」「なぜ病気になるのか?」
こうした疑問を抱いたことはありませんか?
私自身、鍼灸師として日々多くの方と接する中で、常にこのテーマに関心を持ち続けています。
「病気は心の問題だ」「ストレスが原因だ」といった言葉を耳にする機会も多いですが、本当にそれだけなのでしょうか?
そして、ストレスがなければ人は病気にならないのでしょうか?
ストレスと病気の関係は本当か?
最近読んだ作家・五木寛之さんの著書の中で、興味深い話がありました。
「ストレスが原因でがんになるというが、戦時中、空襲警報で防空壕に避難していた人々は全員ががんになったのか?」
確かに、命の危険を感じるような状況下では想像を絶するストレスがあったはずです。
しかし、そのような人々が全員病気になったわけではありません。
このエピソードからも、「ストレス=病気の直接原因」とは言い切れない複雑さがあることがわかります。
適度なストレスは「生きる力」になる?
もうひとつ、講演会で聞いた、ひろさちやさんの話も印象に残っています。
カナダから日本へウナギを空輸する際、生存率が非常に低く、2~3割しか生き残らなかったそうです。
業者は頭を悩ませた末に、ウナギの天敵である「ナマズ」を一緒に入れて空輸したところ、生存率がなんと8割にまで上がったのだとか。
ウナギはナマズに食べられないように必死で動き回ったことで、生命力が高まったのです。
この話は、「適度なストレスが生存力を引き出す」ことの象徴ではないでしょうか?
痛みは体の“警報装置”
痛みについても、同様の視点が必要です。
痛みがあるからこそ、私たちは「何かがおかしい」と気づき、無理をしないように体を守ろうとします。
もし痛みを一切感じなければ、人はやりたい放題、体を壊れるまで使い続けてしまうかもしれません。
つまり、痛みとは身体からのサインであり、警報装置のようなものです。
痛みの正体は“感情の記憶”?
興味深いのは、痛みの強さは必ずしも体の損傷の度合いと比例しない、ということです。
最近の研究では、痛みは「感情の伴った記憶」とも言われています。
つまり、過去に感じた不安や恐怖といった感情が、脳の中で痛みの解釈に影響を与えているのです。
例えば、過去に腰痛で動けなかった経験がある人は、少し腰が痛んだだけでも「またあの状態になるのでは…」という不安から、痛みを強く感じてしまうことがあります。
これは脳による「痛みの増幅」ともいえます。
逆に、ポジティブな感情を持つことで痛みを感じにくくなるケースもあります。
痛みの大小は、体だけでなく「心」や「記憶」によって左右されるのです。
痛みや病気とどう向き合うか?
ここまでの話から言えるのは、痛みや病気は単なる「敵」ではなく、体と心の状態を知らせてくれる大切なメッセージだということです
私たちができるのは、そのメッセージに耳を傾け、無理をせず、必要に応じて身体のケアをすること。
そして、「痛いからダメだ」「病気だから不幸だ」と一方的にとらえるのではなく、自分自身の体と心のバランスを見直すきっかけにすることが、何より大切ではないでしょうか。
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